患者様からよくいただく質問の一つに、
「インプラントって何ですか?」
「入れ歯やブリッジと何が違うんですか?」
「自分に合っている治療なのでしょうか?」
というものがあります。
テレビやインターネットで「インプラント」という言葉を聞く機会は増えましたが、実際にはどのような治療なのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、インプラント治療について歯科医師の立場からできるだけわかりやすくお話ししたいと思います。
インプラントとは?
インプラントとは、失ってしまった歯を人工の歯で回復する治療法です。
歯を失った部分の顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着します。
簡単に言うと、「歯の根っこから作り直す治療」です。
天然歯は、
- 歯冠(見えている部分)
- 歯根(骨の中に埋まっている部分)
からできています。
虫歯や歯周病、事故などで歯を失うと、歯根も一緒に失われてしまいます。
入れ歯やブリッジは歯の根を再現することはできませんが、インプラントは人工歯根を骨の中に固定するため、天然歯に近い機能を回復することができます。
なぜ歯を失ったままにしてはいけないのか
「奥歯1本だから大丈夫」
「見えない場所だからそのままでいい」
そう考えてしまう方も少なくありません。
しかし、歯を失ったまま放置すると様々な問題が起こります。
まず、隣の歯が倒れてきます。
歯はお互いに支え合いながら並んでいます。1本なくなると、そのスペースに向かって周囲の歯が動いてしまいます。
さらに、噛み合っていた反対側の歯が伸びてくることもあります。
その結果、
- 噛み合わせが悪くなる
- 食べ物が詰まりやすくなる
- 虫歯や歯周病のリスクが高くなる
- 顎関節に負担がかかる
といった問題につながります。
また、歯がない部分の骨は徐々に痩せていきます。
骨は噛む刺激によって維持されています。
歯がなくなると刺激が伝わらなくなり、少しずつ骨が吸収されてしまうのです。
実際に診療していると、「もっと早く来ていただければ簡単な治療で済んだのに」と感じるケースも少なくありません。
歯を失ったら、できるだけ早めに相談することが大切です。
歯を失ったときの3つの選択肢
歯を失った場合、主に次の3つの治療法があります。
①入れ歯
最も歴史のある治療法です。
取り外し式で、比較的短期間で治療できます。
保険適用の入れ歯もあるため費用を抑えられるメリットがあります。
一方で、
- 違和感がある
- 外れやすい
- 噛む力が弱い
- 発音しにくい場合がある
などのデメリットもあります。
②ブリッジ
失った歯の両隣の歯を削り、橋渡しをするように人工歯を固定する方法です。
固定式なので違和感は少なく、比較的しっかり噛めます。
しかし、健康な歯を削る必要があります。
歯科医師としては、何も問題のない歯を削ることに抵抗を感じることもあります。
③インプラント
顎の骨に人工歯根を埋め込むため、隣の歯を削る必要がありません。
また、しっかり固定されるため天然歯に近い感覚で噛むことができます。
周囲の歯への負担も少なく、長期的な安定が期待できる治療です。
インプラントのメリット
私がインプラント治療を行っていて最も感じるメリットは、「しっかり噛めること」です。
患者様からも、
「久しぶりにお肉が噛めた」
「片側だけで食べなくなった」
「食事が楽しくなった」
というお声をいただきます。
その他にも、
- 天然歯に近い見た目
- 違和感が少ない
- 取り外し不要
- 周囲の歯を削らない
- 骨が痩せにくい
- 長期間使用できる
といったメリットがあります。
特に働き盛りの方や人前で話す機会の多い方にとって、見た目や快適性は大きな魅力だと思います。
インプラントのデメリット
もちろん、良いことばかりではありません。
インプラントにもデメリットがあります。
まず外科処置が必要です。
ただし、「手術」と聞くと大変なものを想像される方も多いですが、多くの場合は局所麻酔で行うことができ、痛みもほとんどありません。
当院ではサージカルガイドを活用し、安全性を高めながら治療を行っています。
また、骨の状態によっては骨造成が必要になる場合があります。
さらに保険適用外のため費用負担があります。
しかし、10年、20年という長期的な視点で考えると、十分価値のある治療だと感じています。
インプラントは誰でもできるの?
基本的には多くの方が治療可能です。
ただし、
- 重度の歯周病
- コントロール不良の糖尿病
- 重度の喫煙習慣
- 骨量不足
などの場合は注意が必要です。
現在ではCT撮影による精密診断が可能になり、以前なら難しいと判断された症例でも治療できるケースが増えています。
当院にも「他院で断られた」という患者様が来院されることがありますが、実際に診査してみると治療可能な場合も少なくありません。
まずは正確な診断を受けることが大切です。
私がインプラント治療に力を入れる理由
私が歯科医師を目指したきっかけの一つは、父が糖尿病で歯を失い、食事に苦労していた姿を見たことでした。
歯を失うことは単に食べにくくなるだけではありません。
人前で笑うことをためらったり、好きな食事を避けたり、自信を失ってしまうこともあります。
だからこそ私は、
「噛めるようになること」
だけではなく、
「自然に笑えること」
「人生を楽しめること」
までサポートしたいと考えています。
実際にインプラント治療後に患者様の表情が明るくなる瞬間を見るたび、この仕事のやりがいを感じています。
まとめ
インプラントとは、失った歯の根から回復する治療法です。
入れ歯やブリッジと比較して、
- よく噛める
- 見た目が自然
- 周囲の歯に負担をかけにくい
という大きな特徴があります。
もちろん、すべての方にインプラントが最適とは限りません。
お口の状態や生活スタイル、ご予算によって最適な治療法は変わります。
当院では、インプラントだけを無理におすすめすることはありません。
ブリッジ、入れ歯、親知らず移植なども含めて、それぞれのメリット・デメリットをしっかりご説明したうえで、患者様にとって最良の選択をご提案しています。
歯を失ってお困りの方や、インプラントについて詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。
フリージア歯科クリニック(オリックス本町ビル院)
院長・歯科医師 浦 栄吾
日本口腔インプラント学会 専修医
日本口腔外科学会 会員
日本歯内療法学会 会員
日本睡眠歯科学会 会員
日本歯科審美学会 会員
日本臨床CAD/CAM学会 会員
文責:院長 歯科医師 浦 栄吾